社葬の舞台は寺院からホテルへ
どの社葬に行っても装飾や演出が似たり寄ったりだと感じた人は少なくないだろう。しかし価値観の多様化につれて、社葬の形にも変化が見え始めている。
故人の追善供養としての儀式から、顧客や取引先、社会への対応を重視した式典、お別れのセレモニーへと変わりつつあるのだ。
場所も以前は寺院や葬儀社の斎場で行うのが一般的だったが、最近はホテルを利用する例が増えている。ホテルはセレモニーにふさわしい格式を備えているし、大勢の会葬者に対応することができる。
経費面から見ると、寺院で行う場合には大テント、受付設備、待機場所、冷暖房設備、幕張りなどの費用がかさむが、ホテルならそれらを大幅に軽減することが可能になる。
企業の中には、宗教色の強い葬儀に関わることへの抵抗感から社葬を行わないところもあるが、ホテルでのセレモニーという形であれば宗教的な雰囲気が軽減でき、企業の社風を表すこともできるのでメリットは大きい。
ただしホテルの利用に際しては注意も必要だ。ホテルのバンケットは今でも結婚披露宴などの祝儀が基軸で、不祝儀の催しに不慣れだったり、社葬の進行や演出に長けたスタッフがいないところも多い。万一、遺族や会葬者への配慮を欠くことがあったら、それは社葬を執行する企業の責任であり、企業のイメージも損ないかねない。
そうした失敗を避けるためには、セレモニートータルプロデューサー、フューネラルプロデューサーなどと呼ばれる専門家に依頼するといいだろう。セレモニートータルプロデューサーは社葬の意義を踏まえながら、ホテルと施主企業の調整を行い、企業、故人、遺族に最適なセレモニーを企画・遂行してくれる。形骸化した儀式ではなく、厳かでぬくもりのある社葬を行う上でも頼りになる存在である。
個性化が進む中で、専門家とともに演出する社葬は企業の個性を打ち出す機会にもなりそうだ。 |